というわけでゆっくりと駆け足で紹介してきた今回のヴェネツィア・ビエンナーレ。それぞれの感想やセレクトはもちろん僕個人の好みや興味に拠るものですし、最初にことわった通り、それぞれの作品の権利は当然その作家にあります。ということを確認した上で全体の感想を。
正直な感想としてはまず「前回より金かかってなさそう」。もちろん、金かければいいわけではないし、作家の制作費やアーティストフィー以外の部分で無駄にお金が使われたりしてきたりという事実もあったりするようだし、今までの金のかけ方がどうかもわからないけど、会場構成があまり遊んでない印象。前回のArsenalは会場自体を床を上げたりしながら立体的に構成していた。映像の見せ方一つとってもあまり工夫が感じられなかった。
そして「ちょっとふざけ過ぎ、もしくは寒い…」。アートスケープで村田真氏も
いつになくタワケた作品が多いなあ、というのが今年のヴェネツィア・ビエンナーレの第一印象だ。タワケた作品とは、ウケをねらったり笑いをとろうとする作品のことであり、永続的な感動より、センセーショナルな刺激や一瞬の快楽に賭ける態度のことだ。
ヴェネツィア・ビエンナーレ2005 レポート 村田真
と冒頭で挙げているのだが、これには同感。もちろんそれで面白い作品もあるだろうし、その境界には好みなどもあるけれど、全体にそういう雰囲気を感じてしまうのはどうだろう。ばかばかしさがかえって話題のドイツ館なんかは真面目(!)な自分にはとても受け入れられるものではない。
さて、それではもうヴェネツィア・ビエンナーレには行く必要がないのか?というと…

この二人の映像、一見静止画だと思っていると、まばたきをし、それぞれの呼吸のわずかな震えのように触れそうで触れない距離をずっと保っている。何が始まるわけでもない、そのもどかしい感覚がかえってリアリティを感じてとても印象に残っている。
張られた水の上に上から吊られたスピーカー。そして流れる音とのサウンド
今回の各国のパビリオンの中で建物へ一番「絡み」というか「責め」ていたのはこのオーストリア館。もともとがどうだったか覚えてないが、建物全体を包み込んで新しい外観に変えてしまっている。強引なくらいの構造を組まれた内部は自由に歩いたり、上ったりできるようになっていて、上方へ行くと隠されたパビリオンのもともとの屋根が見えたり、自分で窓を開けて、外を眺めたりできるようになっている。アーティストはHans Schabus。やっぱり会場や建物と積極的に関係を持っているものは面白いなと再確認。ただ中はとても蒸し暑い…
タイトルは"
ベルギービール好きには並べられただけのDuvel瓶の不安定な床の上を歩くのがとても気持ちいい。
「洗練」とは全然対極のフレッシュな「勢い」を各作家にも館全体にも感じたのが今回の韓国館。しかしそれぞれはバラバラのようでいてお互いの作品や建物自体と密に関係性を築いている。複数のアーティストによるパビリオン自体の一体感、完成度では一番だったように思う。コミッショナーはキム・スンジュン。パチンコ玉の箱のようなプラスティック製のメッシュの赤い箱での館を増築したかのようなインスタレーション、一旦外に出ての膨らんだり萎んだリを繰り返す「ドラゴンフラワー」、室内のグラフティのような壁に直描きのドローイングなど。
なんとも不気味な「ひとがた」を並べてのインスタレーションはBalays kicsinyでタイトルは"An Experiment in Navigation"。シュールで異様なフィギュアが並ぶ空間がなんとも静かに感じられる。そのせいか中庭の四角く切り取られた青空の「ぬけ」がなんとも開放感があって気持ちいい。
というわけで、もう説明のいらないジェニー・ホルツァー。彼女の作品はそれこそあちこちでよく見てきているけれど、初めてきれいだと思った。
南ア出身のキャンディス・ブライツは好きな作家の一人。日本でも2002年の「
今回のペインティングの中で一番良かったのはフランスの彼の作品。ブラシストロークと、「混ざる」「重なる」「触れる」といった絵の具の性質をうまく使い、光を感じるオーソドックスな平面な作品。こういう場で期待しがちな「真新しさ」は全くないといっていいけれど、久しぶりに「絵」としてきれいな作品を見た気がした。会場の白い空間にとてもマッチしていた。
そんな流れに少し辟易している中、このシンプルな作品はとても印象的。白い砂を金属の櫛がゆっくりと回転しながらレコードのような溝を刻み続けていく。Zen Gardenのような静けさとマスマティカルな造形の美しさ。
嫌悪感を抱く人も多そうだが、自分的にはかなりハマったBlue Nosesのビデオ作品。はっきり言ってどれもふざけすぎなのだけれど、ステレオタイプなフェミニズムの作品に対しての強烈なアンチになっていて、そのシニカルさは痛快なほど。短いループの映像に早回しの高いキャッキャッという音声。
パンツを履いたままのSEXの真似事… 最初裸の女性が逃げてきて、何かと思うと次に今度裸の男性が追いかけてるかと思えばやっぱり何かから逃げていて、最後出てくるのは海で使うようなビニール製の空気で膨らますワニ… ピンに見立てた女性3人を自分が転がって倒すボーリング…
会場を入ってすぐ、Guerrilla Girlsの寒ーいポスター群に迎えられて今回のビエンナーレがとても不安になるが、その部屋の中央にあるこの巨大な
インドの作家。ステンレスの冷たい光沢がなんとも美しいインスタレーション。いくつものキャビネットに収められた鍋、パン、キッチンツール。女性の作品かと思ったらどうやら男性らしい。料理、キッチンというモチーフだけに、美しさの裏の強迫観念的なものが際立っている。
ベルリンを後にして今度はイタリアはヴェネツィアへ。もちろん目的は2年に一回の現代美術の国際展「
そんな中でもわりとおいしかったのは、スパゲッティ・ボンゴレ。日本では白いものが多いけどイタリアにはトマト入りの赤いものも多い。こっちの店はぴったりの茹で加減だ。アドリア海に臨み、運河が走るヴェネツィアだからかやはりシーフードは安心出来る。観光名所のリアルト橋の近くに魚市場もあるので行ってみると面白い。
そして、シーフードのフライの盛り合わせ。イカにタコに貝に海老も大小、さらには手の長いのが殻付きで揚がっている。これにレモンをたっぷりと搾る!これにはワインもいいけどやっぱりビールが欲しくなる。