華氏911の熱

FAHRENHEIT 9/11 華氏911 監督:マイケル・ムーア
 水曜日に、混んでそうな恵比寿ガーデンを避けて、テアトル銀座にて見たのだけれど、「Bowling for Colunbine」以上に高揚させられる内容&編集と、同じ上映回を見た人同士のある種の共通体験の”熱”で、感想を書くのを保留にしておいた。

 「華氏911」は、”The BIG ONE”、「アホでマヌケなアメリカ白人」、”Bowling for Columbine”、「おい、ブッシュ、世界を返せ!」と、それぞれの扱うレベルこそ違うけれどマイケル・ムーアの今までの一つの集成となっている。そして、今回暴いてくのは911後のアメリカ、そしてアメリカ国民を、世界を欺いてきたブッシュその人である。マイケル・ムーア曰く「もう騙されない、Shame On You!」ために。

 前作も今作もメディアでも、一般映画視聴者でももちろん、当の政治関係者(小泉含む)でもいろいろ意見がかなりの熱もしくは静観・無視をもって交わされてきたわけだけれど、一つ確認しておかないといけないのは「マイケル・ムーアはジャーナリストではない。映画監督だ。」ということ。政治的に偏っている、事実を歪曲している、そんな批評はそもそもずれている。

 アメリカは、この映画を見て、「アホでマヌケなアメリカ白人」を見て、なぜ何も変わらないのだろうか。これから変わるのだろうか。人はそれこそ何でもブームとして熱されやすく、冷めやすい。「Bowling for Columbine」、アフガン、イラク、もちろんサラエボ・ボスニアについても全て一時の熱狂ですませてきた。「自己責任」という言葉で人質事件を済ませてしまう日本もだ。

 僕が去年サラエボへと向かう前、これだけウェブが大きくなっても、日本語で得られるサラエボの情報なんてほとんど無かった。メディアなんてそんなものだ。結局は足を踏み出さなければわからない。

 マイケル・ムーアのこの映画はもちろん、ブッシュとその一味の悪行を暴くために意識的に、見た人がブッシュを憎むように作られている。そしてみんなその熱にうかされる。だが、それは批判される事ではない。彼がずっと追ってきたブッシュの事実がそこにはあるし、ムーアは自分のメッセージのために映画を作っているのだから。かれはニュース報道を作っているわけではない。批判しなければいけない報道メディアはアメリカにも日本にもいくらでもある。

 僕は、個人としては戦争は反対だし、ムーアを支持するし、ブッシュもブレアも小泉も同様に、今のこの世の中の責任を問われるべきだと思っている。そして彼らを選んできた自分たちも。だからこそ、ムーアのこの映画に対しても反ブッシュ、反戦争、そんな熱で簡単に済ませては意味ないし、もったいないと思うのです。

 だって、それってブリトニー・スピアーズが「ブッシュは正しいことしてると思うわ」と言うのと一緒でしょ。「マイケルは正しいことしてると思うわ」。恥ずかしい。

 アメリカの大統領選挙で、少しは変わるだろうか。ホワイトハウスが今作に寄せたコメントのように、結局は大きいアメリカの中でマイケル・ムーアも適当に泳がされているだけなのだろうか。選挙の結果が出るのが楽しみ。そしてブッシュ・ゴアの時のような不正に騙されるようなことがないように願う。


 映像としてショックだったのは、ブッシュがとても滑稽で哀れでかわいそうに見えた幼稚園でのシーン。”Bowling for Columbine”のチャールトン・ヘストンを思い出す。今回編集は正直、作為が過ぎる気もする。前回は自分自身が足で集め、インタビューをした素材が多かったのに比べると、今回は扱う相手の差もあるが、取材より編集が割合として大きい。”Bowling for Columbine”のラストで、足を引きずっているチャールトン・ヘストンを追い詰めていくシーン、”The BIG ONE”で、ナイキCEOとの笑顔の下での緊張感あるやりとり、そんな個人としてのリアリティを持ちえるカットがないのが物足りないし、メッセージを弱くしていると思うのだが。(議員へ息子の入隊を勧めるシーンは役不足)

 久しぶりに長い...

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