この本が出たのはもう昨年の5月だが、やっと年末になって福岡で読んだ。
これは日本のインターネット草創期からの個人サイトと個人ベースのコミュニティについての「歴史教科書」だ。特に、今までちゃんとまとめられてこなかった、いかがわしい方面のカバーと、年表の充実ぶりがすごい。
2ちゃんねるが出てくるまでに、すでにこれだけのことが起きていたのかという事実。掲示板をめぐるいろいろな事件とその顛末。「歴史は繰り返す」というのが本当だと納得させられる。今ネットのあちこちで起きているコミュニティ、コミュニケーション絡みのアレコレは、過去をなぞっているだけなのかも知れない。
なかでも興味深かったのは第一章「ニッポンの商用インターネットの草創期」中、ウェブ暴力のトリックスターの項だ。
WEB暴力。ケンカ相手求む!!
これは11月に「チク菱」を立ち上げる中村ユウゴ氏が行なったネットバトル企画で、「ちょっと持て余しの気味のニキビっこ諸君にとっておきのお願いがありまーす」とやや挑発的に、ウェブ上で喧嘩相手を募集したのが始まりだった。
これが95年の話。FLASHにちょっと興味ある人ならピンとくるかも知れない、上の中村ユウゴ氏というのは、まさに中村勇吾さんである。氏の代表的な仕事は以下。きっとどれか見たことあるに違いない。
そういえば、昨年BankARTの企画にも登場していたように思う。FLASHというだけでない、魅力的なコンテンツを送り出し続ける氏と、その95年の「WEB暴力。」がリンクした時、ゾクッとした。相互批判による意識向上と活性化、ウェブ上のコミュニケーションのあり方を浮き彫りにした
出来事だったようだ。そういう意味では方法は180度違うものの、"ecotonoha"と本質的には変わらない。
どの項も著者のばるぼらさんの周到なリサーチと資料により、その充実度は恐るべきほど。ぜひ読んで欲しい。
書中ではブログが一般的に広まる2004年辺りまでを扱っているのだけれど、著者には日本のブログ史に重要な別の著作が2003年にある。
まだブログ(ウェブログ)を知る人、ましてや自分でやっている人なんて少なかった時に、書店でこの本を見て始めた人は多いに違いない。装丁、デザインにまるで気を使っていないパソコン書籍コーナーで、この本は異質で手に取らせる魅力があった。
僕もこの本でMovableTypeとブログを始めた一人だ。
インストール、セットアップ辺りの記事はさすがにバージョンが古くて今では実用的でないが、後半のトラックバックの紹介、ブログの歴史は今でも十分価値がある。
「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」を読んで、てっきり「ウェブログ入門」のブログの歴史はばるぼらさんがまとめたものだと思っていたけれど、確認してみたらそこは堀越英美さんの執筆で、ばるぼらさんはRSS、トラックバックについてを担当していた。
2006年、ばるぼらさんは新しくMovableTypeでブログを始めたらしい。
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