路上日記/野村誠


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作曲家野村誠がロンドンの留学から帰り、思春期の都市「東京」で始めた鍵盤ハーモニカの路上演奏。その日記(96/6/20~99/4/10)とCDのセット。

山手線のほぼ全駅に渡って、そこで知りあった人を巻き込みながら、雨の日も路上で鍵盤ハーモニカを吹く。反応のいい日も、悪い日も、楽しいハプニングも、嫌な思いも。道行く人たちと鍵盤ハーモニカをきっかけに始るコミュニケーションの様子はどれも面白くて、一気に読んでしまった。

プロの作曲家である野村誠が、サザエさんのテーマ、イパネマの娘から武満徹、ベートーヴェン『テンペスト・第3楽章』まで知っている曲ならなんでも「鍵盤ハーモニカ」という子供のものと思われている楽器で演奏してしまう。

なかでも中野駅北口でのおじさんとのやりとりは見物だ。

お前たち、一体何なんだ?何のためにやっているんだ?宗教なのか!

なんで、『サザエさん』なんだ。お前たちは、『サザエさん』の宣伝をしているのか。何なんだ、お前たちの主張は。

野村はこう見えて、表現の幅の広い、いい楽器なんですよ。とサザエさんのテーマをおじさんに演奏する。

ノリの悪い日も、みんなが知っているサザエさんのテーマを吹けば、人は止まってくれた。

おじさんが、『別の楽器を入れなきゃ……』って言ってくれたように、興味のある人が、意見を言ってくれたりするでしょ。さっきだって、『薔薇が咲いた』をリクエストされて、なるほど『薔薇が咲いた』って名曲だなあって発見したりして。そうやって、道で演奏して、興味を持った人と、意見のやりとりしたりして、この楽器で、路上で、どんな音楽ができるのか、一緒に見つけていきたいんですよ。

相手の目を見てそう話す。

分かった。じゃあ、お前たちがそうやって、見つけてきた、一番これだ、と思うものをやってみろ。

そこで、野村が吹くのは… やっぱり『サザエさん』だ。そして、その真剣さはおじさんにも通じる。

野村誠といえば、以前僕も「アートという戦場、サラエボという戦場」で触れたように、最近では子供や老人、障害者たちとの共同作曲ワークショップが有名だが、それによっての誤解も多いようだ。

この自身のはてなダイアリーのプロフィールでも書いてあることは、子供のワークショップをよくやるアーティストの多くにとって、結構本音であるようにも思う。

ありがとう。でも、僕、音楽に人生捧げてますから。
野村誠がこう言うように、僕はいえるだろうか?
「ありがとう。でも、僕、美術に人生捧げてますから。」


この本とCD、残念ながら出版元のペヨトル工房の出版停止により、かなり手に入りにくい状況になってしまっている。
ペヨトルファン/PEYOTL FAN」と言うページで、ペヨトル工房の書籍を扱っている書店のリストが挙がっているが、ぱっと見たところ、「路上日記」はあまり無い模様。本屋で見つけたら即買い!

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