September 28, 2005
読書の秋でも『食道楽』 etc.
新年をいわう「胃吉」と「腸蔵」の挨拶から小説は始まる。こんなウィットに富んだ村井弦斎『食道楽』が、岩波文庫から復刻され話題になっている。
明治期の新聞小説の第一人者村井弦斎(1863〜1927)の代表作。和洋六百数十種もの料理を盛り込み、明治三六年一月から一年間『報知新聞』に連載され熱狂的な人気を博し、単行本として刊行されるや空前の大ベストセラーとなった。
岩波文庫『食道楽』帯より
ストーリーは大食漢の大原(大腹?)さんの恋愛にそって、おもしろおかしく展開していく。しかしそれ以上に、最先端の料理書として、諸国の料理がのっているグルメ本として、このころの日本の食文化に大きく影響を与えた本であったことは間違いない。
明治といったら江戸の次の年号だが、この時代にこれほど多くの西洋料理や調理法があるとは、まったくもって驚きである...
登場する600を超える料理はすべて手間のかかったご馳走ばかり。しかしスローフードというよりは、なぜかスピード感のある雰囲気を読んでいて感じる。駆け足で西洋文化を取り入れていく、このころの時代のパワフルさが各所ににじみ出ていて、読んでいて心地よい。
弦斎はこの『食道楽』で稼いだ印税で、大きな農園を持ち、鶏なども育て、グルメな日々を送ったそうである。小説のみならず、人としてもそうとうグルメな人であったようだ。ちなみに娘の名前は「米子」とつけている。
来る10月1日はこの弦斎ゆかりの地 平塚市で弦斎まつりが行われます。
明治グルメなお弁当販売や、各種イベントが行われるそう。今週末ご予定のない方は、読書の秋と食欲の秋を同時に過ごしてみてはいかがでしょう。
柴田書店のweb libraryでもPDFで読むことができます。
投稿者 Haruna : September 28, 2005 9:31 PM