September 4, 2005
ベルリンとドネル・ケバブ 食紀行
今度はベルリンである。
ボスニアで「Ćevapi チェバピ」を見ると思い浮かぶのは、日本でも有名な「DÖNER KEBAP ドネル・ケバブ」だと思う。でも実際に比べてみると大分違うものになっている。ベルリンで売っているドネル・ケバブはチェバピより野菜が多い。そしてチリ系の辛味も加わる。そしてパンは外側をカリッとさせたパニーニに似たもの。
よく考えてみると不思議な食べ物で、こうやって肉をたくさん重ねて串に突き刺してクルクル回しながら側面を炙る。そして食べる時にはよく研いだナイフで削ぐのだ。誰がこんな食べ方を考えたのかわからないけれど、外側にジューッと肉汁が染み出しているのを見ると食欲をそそられるし、中の方を加熱しすぎないと考えればなかなか合理的な調理法かも知れない。
ベルリンを訪れたことが無い人は「なぜベルリンでケバブ?」と思うかも知れないが、ベルリンは本当にドネル・ケバブを売るインビスや店が多い。
その理由については辺見庸の「もの食う人びと」に記述がある。
- ケバブの店が東西統一後、増えに増えた
- 旧東ドイツ市民の優先雇用、外国人排斥
- 技術、資金面でてっとり早いケバブ店開業
といったあたり。
実はベルリンとケバブについての章は「食とネオナチ」とまでタイトルがつけられていて、食と差別、民族の壁みたいなものにまで触れている。既に「もの食う人びと」が初出から大分経つことと、ここで挙げられているエピソードがあくまで一つのエピソードに過ぎないことを十分ふまえて、それでも重要だと思われる箇所を抜き出してみたい。
「食」ほどすてきな快楽はなく、しかし、容易に差別の端緒になる営みもない。
食べるというのは、それぞれの民族が、祖先や文化の記憶を味になぞることでもあるから、「食」にかかわる差別は深く心を傷つける、と私は思う。
辺見 庸 「もの食う人びと」
サラエボ、ベオグラード、そしてベルリン。一見繋がりが無いようでもあるけれど、そこには歴史的に確実な繋がりがあった。
投稿者 Kei : September 4, 2005 7:18 PM