November 4, 2005
脂肪を知覚するレセプタ etc.
SCIENTIFIC AMERICANに"Potential Taste Receptor for Fat Identified"という記事が出ています。上の記事は英語ですが、Rauru Blog さんで紹介されています。
人間の舌の味覚細胞には CD36 と呼ばれる蛋白質レセプタが存在するのですが、これがどうも脂肪酸を味覚細胞内に運び込むトランスポータの役割をしているらしいとのことです。
If the link bears out, CD36 would allow fat to join the five previously identified tastes that govern the experience of food: bitter, salty, sweet, sour and "umami," or savoriness (like the meaty goodness of soup stock).
Potential Taste Receptor for Fat Identified
今後の研究によっては、既に認知されている五つの味覚に「脂肪の味」が加わるかもしれません。
さて最後に挙げられている"savoriness"という聞き慣れない味覚ですが、これは肉から抽出されるような「滋養味」のようなものです。いわゆる「辛さ」が、ここに入っていないのは、エルヴェ・ティスの『フランス料理の「なぜ」に答える』によると、1916年にへニングが発表した「受容器定位説」で口で知覚できる味は4種類(苦味、塩味、甘味、酸味)である
とされたことによるようです。ブリヤ・サヴァランは肉の風味の主要な成分「オスマゾーム」へ敬意を表して、水に溶ける肉の中の高度に風味のある部分
として、私たちの祖先がさんざん美味を楽しんだ後に発見された
と最大級の賛辞を寄せています。現在はこの「オスマゾーム」なるものが肉から抽出されるエキスの一つとして、過去の空想の産物でしかないことが知られています。
アリストテレスは
色彩と同じように、風味には、一方に甘味と苦味といった相反する概念があり、一方にそこから派生した概念、たとえば甘味からは粘性、苦味からは塩味といったものがある。またこの二つの概念の間に酸味、えぐ味、渋味といったまったく異なる風味が存在している
として、甘味、苦味、酸味、塩味、収斂味、辛味、粗っぽいざらざらした味と七つの味を提唱しています。
大脳中枢、受容体といった研究により、香りなどの他の要素と切り離された、純粋な「味覚」の研究は現在もどんどん進んでいますが、われわれは食べ物をおいしく食べ、楽しむにはやはり「香り」「触覚」「色彩」「温度」を切り離すことが出来ないのを、それこそ太古の昔から知っています。
そして「誰と」「どこで」食べるかが大事なことも。
さて、今日は何を食べようか。
投稿者 Kei : November 4, 2005 4:27 PM