November 24, 2006

菌の見えるマンガ『もやしもん』  etc.

もやしもん 1—TALES OF AGRICULTURE (1) (コミック)
もやしもん』という変なタイトルのマンガが結構面白いのです。

『のだめカンタービレ』15巻中に乱入してきた変な菌たちでこのマンガを知ったものの、しばらくは特に興味も湧かずにいたのですが、このあいだ日本酒について調べていたら、『もやしもん』の名前が出てきたので読んでみました。

東京のとある農大を舞台に、種麹屋の息子で菌が見えるという特異な能力を持つ主人公と醸造/発酵を扱う教授とその研究室、様々な菌たちが出てくる話しなのですが、菌や発酵そして虫までも積極的に扱っている内容がとても新鮮でした。主人公の幼なじみは酒蔵の息子、酒好きの先輩、日本酒に情熱を注ぐ教授とその友人たち。マンガの中でも「日本酒」の比重が特に多いのですが、出てくる食品はどれも興味深いものばかりです。

カナディアンイヌイットのアザラシの発酵食品「キビヤック(腹の中に海鳥を70〜80羽詰めて発酵)」、日本でも一時期話題になった「冬虫夏草」、韓国のエイの発酵刺身「ホンオフェ(世界で2番目に臭う発酵食品)」、日本古来の「口噛みの酒」、世界一臭いスウェーデンのニシンの発酵食品「シュールストレミング」、沖縄の「古酒」。

それぞれに食品を生んだ必然と人間の知恵と菌の力。その成果である発酵食品というのは確かに「人類が唯一成功した錬金術」なのかも知れません。

過剰な潔癖症の危険、インフルエンザ、O-157といった身近なものも擬人化された菌たちによって、イメージが掴みやすくなっているところなんかも秀逸。オススメ。


菌や食品のサイエンス的なことはもちろん、普通の人にとっては馴染のない「農大」といった特殊な学校が舞台になっているのもマンガの大きな魅力。Amazonのカスタマーレビューでも言われているようにどこか『動物のお医者さん』を思い起こさせる。実際の農大生や専門に研究している人から見ればもちろん違和感はあちこちにあるのだろうけれど、これだけ日常的なはずなのにマイナーなテーマをちゃんとマンガとして面白く扱えているところがやはり評価に値すると思うのです。『もやしもん』で日本酒や世界中のローカルな知恵の詰った奇跡(錬金術)的な食品を若い人たちがあらためて見直すきっかけになると素敵だと思います。

もやしもん 1—TALES OF AGRICULTURE (1) (コミック) もやしもん 2—TALES OF AGRICULTURE (2) (コミック) もやしもん 1—TALES OF AGRICULTURE (3) (コミック) 本のカバーだけ見るとどうも地味ーな感じですが、実はなかなか凝っています。上の大きな画像でもわかる通り、1巻は大豆インクを使用、再生紙のカバーと帯は重さと紙の情報を示すチップとカラー印刷時のCMYK情報もそのままデザインに組み込んであったり、2巻、3巻は下から見ると... カバーを外すと... そしてこの記事の最初でも触れている通り、『のだめカンタービレ』をはじめ、あちこちに菌が出張、かも(釀)しているといった具合です。

投稿者 Kei : November 24, 2006 3:28 AM

www.flickr.com
add.me's .automeal photoset

コメント
トラックバック
トラックバックURL : http://www.add-info.com/mt5/mt-tb.cgi/1102

タイトル: 今年のイグ・ノーベル賞を見て
- from Stolen Moments at 2008.10.04

概要: この粘菌の話はマンガ「もやしもん」でも登場するので知ってはいたが、今年の受賞ということで、比較的新しいニュースなのかなと思いちょっと検索してみたら、そうで...